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S/4HANA導入のFI設定①:会社コード(OX02)・勘定科目表(OB13)・会計年度変式(OB29)

FI(財務会計)のカスタマイズは、5つの「組織の土台」を最初に固めることから始まります。会社コード(OX02)・勘定科目表(OB13)・会計年度変式(OB29)・与信管理範囲(OB45)・会社コードグローバルパラメータ(OBY6)の役割と、216ステップあるSAPモジュール設定研修資料(S4 模块配置)のうちFI編44ステップの位置づけを整理します。通貨・会計年度・会社コード境界の設計は後から変えるのが難しいため、導入初期の段階で順序立てて押さえておきたい5つの定義を、実画面の流れに沿って解説します。

公開日:2026-09-26読了目安:約10分閲覧数:—

この記事のポイント

  • FI設定は会社コード(OX02)→ 勘定科目表(OB13)→ 会計年度変式(OB29)→ 与信管理範囲(OB45)→ 会社コードグローバルパラメータ(OBY6)の順で進めるのが定石
  • 会社コードは「独立した財務諸表を持つ最小の会計単位」、会社(Company)は複数の会社コードを束ねる任意のグループ単位
  • 勘定科目表は会社コードより上位で定義し、複数会社コードに共有できる(グループ経営の会計方針統一で効く)
  • 通貨と会計年度変式は後戻りできない。導入設計段階で確定し、OBY6で会社コード既定値として設定する
ADTナビゲーター
「FIの設定って最初どこから手をつけるの?」——S/4HANAの移行プロジェクトで必ず出る質問です。今日は、5つの組織の定義を最初に固める理由と、その中の3つの主要Tコード(OX02・OB13・OB29)を整理します。

01WHAT FIの組織基盤:5つの定義がすべての会計設定の土台になる

FI(Financial Accounting・財務会計)のカスタマイズは、組織構造の定義から始まります。SAP導入プロジェクトでは、まず「どの単位で会計を切るのか」を確定させ、その単位でマスタ・伝票・レポート・権限を組み立てていきます。土台を後回しにすると、転記ルールの不整合や、期末処理時に「想定と違う会計年度で締められてしまった」という問題が起きます。

本記事で扱う例題は、中国拠点を持つ企業ADT(会社コードADT1・通貨CNY・中国会計基準2018)です。S4 模块配置(SAPモジュール設定研修資料・計216ステップ)のFI編44ステップのうち、最初の5ステップがこの組織基盤の定義に充てられています。

5つの組織要素とTコード

FI設定の出発点となる5つの組織要素は、いずれも「組織構造(Enterprise Structure)」または「会計組織構造(Financial Accounting Structure)」に分類され、会社コード単位で構成されます。下表に5つの役割と対応するTコードを整理します。

#組織要素Tコード役割
①会社コード(Company Code)OX02独立した財務諸表を持つ最小の会計単位。通貨・言語・住所など会社固有情報を保持
②勘定科目表(Chart of Accounts)OB13全勘定科目のマスタ一覧。日本基準・中国基準・IFRSなど複数を定義できる
③会計年度変式(Fiscal Year Variant)OB29会計年度の区切り(暦年・4月始まりなど)と特別会計期間の有無を定義
④与信管理範囲(Credit Control Area)OB45得意先の与信限度を一元管理する単位。複数の会社コードを割り当て可能
⑤会社コードグローバルパラメータOBY6会社コードごとに通貨・会計年度変式・言語・認証レベルの既定値を設定
SAP FIの組織階層図。会社(Company)の下に複数の会社コード(1000・2000・ADT1・4000)が並び、各会社コードに勘定科目表・会計年度変式・与信管理範囲が割り当てられる構造を示す
図1:SAP FIの組織階層。上位の会社(Company)→複数の会社コード→各コードに割り当てられる勘定科目表・会計年度変式・与信管理範囲という参照関係
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「会社(Company)」と「会社コード(Company Code)」は別物

日本語だとどちらも「会社」で混同しやすいですが、SAPでは明確に別組織です。会社コードは会計帳簿を持つ最小単位で、財務諸表(貸借対照表・損益計算書)をここで作ります。会社(Company)はその会社コードを連結するための任意のグループ単位です。グループ経営をしないなら、会社コードだけ定義すれば十分です。

例題企業ADTの前提条件

S4 模块配置のFI編で扱う例題企業ADTは、中国市場向けの販売拠点を持つ製造業として設計されています。本社(日本)と中国拠点(ADT1・通貨CNY)の2つの会社コードを定義し、両者で異なる会計基準を適用する構成です。

  • 会社コード1000:本社・日本円・日本会計基準
  • 会社コードADT1:中国拠点・中国元・中国会計基準2018
  • 連結方針:両社を1つの「会社(Company)」に束ねて連結決算

この構成を採ると、勘定科目表を「日本基準用」と「中国基準用」の2つ用意し、会社コードごとに割り当てる形になります。共通項目は勘定科目表間で参照でき、会計基準固有の差分は別表で持つ、というのがSAPの典型的な設計です。

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会社コードとプラント・購買組織・販売組織は別系統

FI組織(会社・会社コード・業務領域)とLO組織(プラント・購買組織・販売組織・倉庫)は階層が分かれており、独立して定義します。「会社コード=1社=1プラント」のように単純対応させる必要はなく、1つの会社コードに複数のプラントを紐づけられます。両者の接続点は、会社コードに紐づくプラントとして割り当てるところで発生します。

02POINTS 5つの定義とTコード(OX02・OB13・OB29・OB45・OBY6)

ここからは、各組織要素を実際に定義する手順をTコードベースで整理します。FI設定の入口は会社コード、次に勘定科目表、その後に会計年度変式と進みます。与信管理範囲とグローバルパラメータは後半の与信管理・転記制御で効いてくるので、最初の設定順としては後回しが定石です。

  1. ① 会社コードを定義する(OX02)トランザクションOX02を開き、会社コード・会社名・市区町村・国・通貨・言語を入力する。ここで決めた通貨は後で変えるのが極めて難しいため、必ず関係部門と合意を取った上で確定する。
  2. ② 会社コードを会社に割り当てる(OX15/任意)連結決算用に複数の会社コードを束ねる場合は、OX15で「会社(Company)」を作成し、会社コードを割り当てる。グループ経営をしないなら省略可。
  3. ③ 勘定科目表を作成し、会社コードに割り当てる(OB13/OB13の割当)OB13で「日本基準」「中国基準」「IFRS」など会計基準別の勘定科目表を定義し、会社コードに割り当てる。1つの勘定科目表を複数会社コードで共有できる点がミソ。
  4. ④ 会計年度変式を定義し、会社コードに割り当てる(OB29/OB29の割当)会計年度の区切り(暦年・4月始まり・特殊会計年度)と、特別会計期間の有無を決める。期末処理・転記期間の基礎になるため、会計部門の方針を先に固める。
  5. ⑤ 与信管理範囲を作成し、会社コードを割り当てる(OB45)得意先の与信管理を1つの単位で行うための領域を作る。複数の会社コードを1つの与信管理範囲に束ねると、グループ全体での与信管理が可能になる。
  6. ⑥ 会社コードグローバルパラメータで既定値を確認する(OBY6)会社コードごとに通貨・会計年度変式・言語・認証グループが正しく既定値として入っているかを最終確認する。ここが間違うと、後続の伝票・レポートで想定外の動作になる。
5つの組織要素の参照関係。OX02で会社コードを作成し、OB13で作成した勘定科目表・OB29で定義した会計年度変式・OB45で定義した与信管理範囲を割り当てる。OBY6で既定値を最終確認するという流れ
図2:5つの組織要素の定義と参照の流れ。OX02起点で右方向へ設定が広がる
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通貨と会計年度変式は「後戻りできない設定」の代表格

会社コードの通貨は転記・評価換算・税計算すべてに波及するため、原則として後から変更できません。会計年度変式も期末・決算処理の基盤になるため、変更には別会社コードへの再作成と伝票再転記が必要になります。導入キックオフの段階で、関係部門(経理・財務・情報システム)と合意した要件を、OX02とOB29の設定前に必ず文書化しておくのが安全です。

勘定科目表と会社コードの「多対多」関係を使いこなす

勘定科目表は会社コードより上位のレベルで定義され、複数の会社コードに割り当て可能です。逆に、1つの会社コードには複数の勘定科目表を割り当てることもできます(業務用に国別+連結用にIFRS、のような構成)。この柔軟性のおかげで、グループ企業ごとに異なる会計基準を維持しつつ、共通項目は1つのマスタで管理できます。

S/4HANAでは「Universal Journal(統合ジャーナル)」の導入により、財務会計・管理会計・セグメント情報を1つのテーブル(ACDOCA)に統合保管します。勘定科目表は引き続き会計基準別の管理に使われますが、裏側のデータ構造は統合されているため、レポート側で複数基準の集計がしやすくなっています。

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Universal Journal(ACDOCA)で何が変わったか

従来はFI伝票テーブル(BKPF/BSEG)とCO伝票テーブル(COEP/COEJ)が別々に存在し、両者を結合する複雑なクエリが必要でした。S/4HANAではACDOCAという1つのテーブルにすべての会計エントリが集約され、リアルタイムの経営レポートが大幅に簡素化されています。設定側から見ると「勘定科目表の使い分け方針は従来通り」ですが、レポート側で複数基準の合算がやりやすい点が大きな変化です。

03INSIGHT なぜ「組織の土台」を最初に固めるのか

FIの設定は会社コードなどの組織単位に紐づくため、土台を後から変えると関連する全設定・マスタデータ・伝票に影響が及びます。導入時に「とりあえず進める」ことを選んで後で組織を変更すると、再転記・再集計・監査対応のコストが膨らみます。逆に、最初の5ステップで組織の合意と設定を済ませておけば、後続のFI-AR・FI-AP・FI-GL・FI-AAの各サブモジュールの設定は「組織を前提にした単なるルール定義」に過ぎず、難易度が大きく下がります。

特に通貨と会計年度変式は後戻りが効きません。例題企業ADTの場合、中国拠点にCNY・日本本社にJPYという通貨構成は途中で崩せません。後から「中国拠点をHKDに変えたい」となると、会社コードの再作成と関連伝票の換算・再転記が必要になります。導入では、会社コードを束ねる「会社(Company)」の定義も含め、将来のグループ会社追加を見据えて設計します。

実務的には、最初のプロジェクトで「FI組織5点セット」のチェックリストを完成させ、関係部門と合意文書を交わしてからOX02・OB13・OB29の設定に着手するのが安全です。ADTでは、SAPコンサルタントが要件定義ワークショップで5つの組織要素を一つずつ確認しながら決定する進め方を採用しています。全体像はSAP MMのエンタープライズ構造の解説(6つの組織レベル)で確認できます。

まとめ

  • FI設定の出発点は会社コード(OX02)→ 勘定科目表(OB13)→ 会計年度変式(OB29)→ 与信管理範囲(OB45)→ 会社コードグローバルパラメータ(OBY6)の5つ
  • 会社コードは「独立した財務諸表を持つ最小単位」、会社(Company)は任意の連結用グループ単位
  • 勘定科目表は会社コードより上位で定義でき、複数会社コードで共有できる
  • 通貨と会計年度変式は後戻りできない。関係部門と合意した設計をOX02・OB29の設定前に文書化する
  • S/4HANAのUniversal Journal(ACDOCA)で複数会計基準の集計が容易になっている

出典・参考

※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-09-26)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。

04FAQ よくある質問

ADTナビゲーター
FIの組織設定は最初の数ステップですが、判断を間違えると後工程に響く部分です。よく聞かれる4つの疑問に答えます。
会社コードと会社(Company)の違いは?

会社コードは独立した財務諸表を持つ最小の会計単位で、貸借対照表・損益計算書はここで作成されます。会社(Company)は複数の会社コードを束ねる任意のグループ単位で、連結決算用に作成します。グループ経営をしないなら、会社コードだけ定義すれば十分です。

勘定科目表は会社コードごとに作る必要がありますか?

いいえ。1つの勘定科目表を複数の会社コードで共有できます。グループ企業で会計方針を揃えたい場合は、共通の勘定科目表を上位に置いて複数の会社コードへ割り当てる構成が定石です。逆に必要な場合は1つの会社コードに複数勘定科目表を割り当てることもできます。

会社コードの通貨を後から変更できますか?

原則として後から変更できません。通貨は転記・評価換算・税計算すべてに影響するため、導入設計の段階で確定させる必要があります。変更する場合は会社コードの再作成と関連データ移行が必要になります。OX02の設定前に、関係部門と合意した通貨要件を必ず文書化してください。

会計年度変式と転記期間の違いは?

会計年度変式(OB29)は「会計年度をどのように区切るか」を定義します(暦年・4月始まりなど)。転記期間(OBBO)は「区切った各期間ごとに、入力できる月数をどう割り当てるか」を制御します。両者は別トランザクションですが、期末・決算処理の前提として密接に関係します。

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この記事について

執筆

アラディンテクノロジー株式会社 編集部

SAPコンサルティングとAI活用の現場知見をもとに、基幹業務のスマート化に役立つ情報をお届けしています。

監修

劉 瑞(リュウ ズイ)

代表取締役社長。SAP ABAP開発からコンサルティングまで15年、来日20年弱。「SAP×AI」の融合による価値創造に注力しています。

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