目次
この記事のポイント
- 会社コードは自前の財務諸表を持つ最小の会計単位で、定義は必須(OX02)。会社は任意(OX15)
- 定義は「会社 → 会社コード」の順で、OX15 → OX02 の2画面で完了する
- 会社コードの通貨・言語・国は後から変更が難しく、設計段階での確定が必須
- 定義後はプラント(OX10)や購買組織(OX08)を作り、割当(OX18・OX01・OX17)で階層をつなぐ
01WHAT 会社と会社コードの関係——2つの違いと定義の順番
SAP MM(Materials Management=購買・在庫管理)の設定は、企業の組織をシステム上に表す「エンタープライズ構造」の定義から始まります。この連載の前編で、クライアント・会社コード・プラント・保管場所・購買組織・購買グループの6つの組織レベルを解説しました。本記事はその「定義」編の第1回として、会社(Company)と会社コード(Company Code)の2つを作成します。
会社と会社コードは名前が似ていますが、役割と必須度が異なります。まずこの2つの違いを正確に理解することが、迷わず設定を進めるコツです。
会社(Company)=会社コードを束ねる上位のまとまり(定義は任意)
会社(Company)は、複数の会社コードを束ねる上位の組織単位です。たとえば国内に3法人、海外に2法人を持つ企業グループで、法人ごとに会社コードを持つ場合に、それらを「日本会社」や「○○グループ」としてまとめたいときに使います。
財務諸表の連結(グループ決算)や、会社単位のレポートをまとめて見たい場合に役立つ単位ですが、MMの購買業務だけを行うのであれば必須ではありません。SAP標準の導入順でも、会社コードの定義は必須、会社の定義は「必要な場合のみ」とされています。とはいえ、あとから会社を追加しても大きな影響はないため、まずは定義方法だけ押さえておけば十分です。
会社コード(Company Code)=自前の財務諸表を持つ最小の会計単位(必須)
会社コード(Company Code)は、自前の貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)を持つ最小の会計単位です。SAPでは、会社コード単位で独立した会計処理が行われ、仕入先の会計データや請求書の支払処理も会社コードに紐づきます。
会社コードは1つ以上必ず定義が必要です。日本の株式会社であれば「1000」、中国子会社なら「2000」のように、法人単位で番号を採番するのが一般的です。通貨(JPY・USDなど)と言語(JA・ENなど)は、この会社コードに対して設定します。
なぜMMの解説に「会計単位」が出てくるのか
会社コードはFI(財務会計)の単位ですが、MMの購買伝票・在庫転記も会社コードに紐づきます。「どの会社コードが発注・支払をするか」が購買業務の前提になるため、MMの設定記事でも最初に会社コードを定義します。FIとMMの組織単位を共有している、という意識を持っておくと理解が早まります。
02POINTS OX15:会社(Company)を定義する4ステップ
まずは会社(Company)を定義します。IMG(SPRO)のメニューを開き、次のパスをたどります。
IMG(SPRO) → Enterprise Structure → Definition → Financial Accounting → Define Company(OX15)
この連載の第1弾でSPRO(IMG)の開き方を解説しましたが、まだの方は先にそちらをご覧ください。ここからはOX15の操作を4ステップで進めます。
- SPROを起動し、パスをたどる——Tコード「SPRO」を実行し、Enterprise Structure → Definition → Financial Accounting → Define Company を選択します。ノード名は英語表示なので「Company」で検索すると速いです
- 新規エントリで会社を登録する——一覧画面の「新規エントリ」アイコンをクリックし、会社名・会社コード(内部採番の場合は任意)を入力します。会社名は法人格まで含む正式名称がおすすめです
- 住所データを入力する——番地・市区町村・地域・国・郵便番号などを入力します。「追加データ」ボタンから詳細な住所情報も登録できます
- 保存して完了を確認する——保存時にトランスポート要求(TR)の入力を求められたら、開発クライアント用の要求を選択します。保存後、一覧に会社が表示されていれば成功です
OX15の入力項目は「会社名」と「住所データ」が中心で、通貨や言語はここでは設定しません。通貨・言語は次の会社コード定義(OX02)で入力するため、混同しないようにしましょう。
03STEP OX02:会社コード(Company Code)を定義する5ステップ
続いて、いよいよ会社コード(Company Code)を定義します。ここがこの記事の本題です。IMGの同じ階層の下にある「Edit, Copy, Delete, Check Company Code(OX02)」を使います。
IMG(SPRO) → Enterprise Structure → Definition → Financial Accounting → Edit, Copy, Delete, Check Company Code(OX02)
- OX02の実行画面で「新規エントリ」を押す——会社コード定義の一覧が表示されるので、上の「新規エントリ」アイコンをクリックします
- 会社コードと会社名を入力する——4桁以内の英数字(例:1000)と正式な会社名を入力します。番号は伝票やマスタに残るため、将来の増設(買収・新設法人)を見越した体系にします
- 住所データ(市区町村・国)を入力する——「追加データ」または住所データのダイアログで、市区町村・国(JP)などを入力します。ここで入力した国が、税や番号範囲などの国の設定を引き出す起点になります
- 通貨と言語を入力する——会社コードの通貨(例:JPY)と言語(例:JA)を設定します。この2つが後から最も変更しにくい項目です。多通貨・多言語で運用する予定があれば、並行通貨や翻訳の仕組みを導入計画に含めておきます
- 保存して表示モードで確認する——保存後、OX02の「表示」で登録内容(会社名・住所・通貨・言語)を確認します。1設定=1確認で、入力ミスを早期に発見できます
通貨・言語・国は「あとから変えられない」前提で決める
会社コードの通貨(WAERS)は、転記(会計伝票)が発生した後は原則変更できません。言語(SPRAS)や国も、変更すると既存マスタや帳票・テキストとの不整合が生じます。「後から直せばいいや」は通用しないため、導入設計の段階で法人ごとの通貨・言語・国を確定させてください。
複数法人があるなら「コピー」で作る
OX02の「コピー」機能を使うと、既存の会社コードを参照して新しい会社コードを作成できます。住所や国の設定を引き継げるため、複数法人(本社+子会社など)を登録する際の入力漏れを減らせます。コピー後は会社名・住所を必ず修正し、通貨が異なる場合は通貨だけを変更して保存します。
04INSIGHT 定義後に必要になる「割当」と「基本設定」
会社コードを定義しただけでは、まだ購買や会計の業務はできません。組織単位は「定義(Define)」して終わりではなく、「割当(Assign)」で親子関係をつなぎ、その上に基本設定を載せることで機能します。定義後に進む流れを整理します(図3)。
会社コードの次に定義するのがプラント(工場・事業所)です。プラントは必ず1つの会社コードに割り当てる(OX18)必要があり、逆に1つの会社コードに複数のプラントを持てます。その次に保管場所(OX09)、購買組織・購買グループ(OX08・OME4)を定義し、OX01(購買組織→会社コード)やOX17(購買組織→プラント)で割り当てます。
また、会社コードを会計・購買で実際に使うには、会社コードの外側の設定も必要です。代表例は次の3つです。
- 会計カレンダー(会計年度バリアント)——決算期(12月決算・3月決算など)を会社コードに割り当てます(OB29で定義、OX02の追加データで割当)
- 転記期間バリアント——月次決算の「どの期間まで転記できるか」を管理します(OB52)
- 勘定表(Chart of Accounts)——勘定科目の枠組みを会社コードに割り当てます(OB13)。仕入先・品目マスタの勘定設定の前提になります
このうち会計まわりの基本設定はFIの領域なので、MMの設定記事では詳細を省略することが多いですが、「会社コードを定義したら次は何をすればいいか」の全体像として覚えておくと、導入プロジェクトでの会話がスムーズになります。組織構造全体の考え方はSAP MMのエンタープライズ構造とは?6つの組織レベル(会社コード・プラント・購買組織)の役割を図解で、SPROの開き方はIMG(SPRO)入門:SAP MMの設定画面への行き方とメニューパスで解説しています。
豆知識:会社コード「1000」はどこから来たのか
SAPのデモ・学習用システム(IDES)では、会社コード1000(ドイツ)や2000(アメリカ)が標準で用意されています。そのため日本語の解説記事でも「会社コード1000」が頻繁に登場します。実際の導入では、自社の番号体系(例:日本法人=1000、中国法人=2000)を最初に決めてから登録しましょう。番号は4桁以内の英数字で、0から始めることはできません。
この会社コード定義の手順は、購買から入庫・支払までの全体フローの中では「組織の土台づくり」にあたります。購買プロセス全体の流れを先に把握しておきたい方はSAP MMとは?購買から入庫・支払までのProcure-to-Payプロセスを解説もあわせてご覧ください。
ADTでは、この組織構造の設計からカスタマイズ・テスト・本番移送・運用定着まで、SAP MM導入を一貫して支援しています。「SAP×AI」の知見を活かし、設計段階から現場オペレーションまで無理のない体制づくりをお手伝いします。多法人・多通貨の組織設計や、既存システムの設定棚卸しのご相談も承ります。
まとめ
- 会社(OX15)は会社コードを束ねる上位単位で定義は任意。会社コード(OX02)は自前の財務諸表を持つ最小の会計単位で必須
- 定義の順番は「会社 → 会社コード」。IMGのパスは Enterprise Structure → Definition → Financial Accounting
- OX02の入力項目は会社コード・会社名・住所・国・通貨・言語の6つ
- 通貨・言語・国は後から変更が難しいため、設計段階で法人ごとに確定する
- 複数法人はOX02の「コピー」で既存会社コードを複製すると入力漏れを防げる
- 定義後はプラント(OX10)→割当(OX18)→購買組織(OX08)と進み、会計カレンダー・転記期間・勘定表の基本設定が必要
出典・参考
- Organization of an Enterprise in the SAP System(SAP Help Portal/SAP S/4HANA Sourcing and Procurement) https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_ON-PREMISE/af9ef57f504840d2b81be8667206d485/2b7eb65334e6b54ce10000000a174cb4.html
- SAP S/4HANA(オンプレミス)ドキュメント(SAP Help Portal) https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_ON-PREMISE
※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-09-07)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。Tコード・メニュー名はオンプレミス/Private Editionの標準機能に基づく一般情報です。
05FAQ よくある質問
会社と会社コードは必ず両方作る必要がありますか?
会社コードは必須ですが、会社(Company)は任意です。単一法人で連結決算をSAP上で行わない場合は、会社を定義しなくてもMM・FIの運用は可能です。ただし、複数会社コードの財務諸表をまとめて見たい場合やグループ決算を行う場合は、会社を定義して束ねます。
会社コードの通貨・言語は後から変更できますか?
通貨は転記(会計伝票)が発生した後は原則変更できません。言語や国も、既存マスタ・帳票・テキストとの整合性の面で変更は大きな影響を伴います。「後から直せる」と思わず、導入設計の段階で法人ごとに確定させてください。多通貨対応が必要なら並行通貨(Parallel Currencies)の導入を検討します。
OX02とOX01・OX18の違いは?
OX02は会社コードの「定義」、OX01は購買組織を会社コードに「割り当てる」設定、OX18はプラントを会社コードに割り当てる設定です。SAPの組織設定は「定義(Define)→割当(Assign)」の順で進むため、OX02で定義してからOX01・OX18で紐づけます。
会社コードの番号は何桁で付けていますか?
会社コードは4桁以内の英数字(先頭に0は不可)で設定します。実務では「日本法人=1000、中国法人=2000、米国法人=3000」のように、法人単位で10の倍数を割り振る例が多いです。番号は伝票やマスタに残るため、将来の増設(買収・新会社)を見越した体系を最初に決めましょう。