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SAP BTPテクニカルアーキテクトとは?Clean Core時代に求められる5つのスキルと役割

S/4HANA移行の標準方針になったClean Core——「コアは改造せず、拡張はBTPへ」。この方針を実際の設計に落とすのがSAP BTPテクニカルアーキテクトです。本記事では、実案件で示された担当業務(BTP Architecture/Side-by-Side Extension/IF・Batch Architecture/Integration Suite/API管理/Event Mesh/データ移行/マスタ整流化)を分解し、必須と歓迎のスキルが何を意味するのか、複数名の募集が示す役割分担までを整理します。

公開日:2026-09-17読了目安:約10分閲覧数:

この記事のポイント

  • BTPテクニカルアーキテクトの仕事は「作る」より「置き場所とつなぎ方を決める」こと
  • 必須スキルの核心はJava/Spring の実装経験。設計と実装を往復できる人材が想定されている
  • 歓迎スキルにKafka・Azure Service Bus・Amazon EventBridgeが並ぶ=非SAPのクラウドネイティブ連携経験の評価
  • 複数名の募集は役割分担が前提。全体設計/連携/API・イベント/データというポジション
  • BTPは経験者が薄く、S/4HANA移行が続く限り設計できる人材の需要は続く
ADTナビゲーター
「BTPのアーキテクト」って、結局なにをする人?——答えは“拡張の置き場所と、つなぎ方を決める人”です。実案件の要件を追いながら見ていきましょう。

01WHAT BTPテクニカルアーキテクトは何をする人か

SAP BTP(Business Technology Platform)は、S/4HANAや周辺システムを「拡張する」「つなぐ」「データを活かす」ためのSAPのクラウド基盤です。テクニカルアーキテクトは、このBTP上で何をどこに置き、どう接続するかを設計する役割を指します。中心にあるのは実装そのものではなく、方式の選択と、関係者間でその選択を合意させる仕事です。

なぜ今、BTPのアーキテクトが必要なのか

S/4HANA移行の標準方針がClean Coreに変わったことが最大の理由です。ECC時代は、標準機能にアドオンやユーザExitを追加して要件を満たすのが一般的でした。しかしコアを改造すると、アップグレードのたびに改修が発生し、保守コストが積み上がります。Clean Coreは「コアは標準のまま使い、拡張は外に出す」という考え方で、その受け皿がBTPです。結果として、拡張をどこにどう置くかを設計できる人材が、移行プロジェクトごとに必要になりました。

コア改造とClean Core(BTP外出し)の比較図
図1:Clean Coreの発想。標準に手を入れず拡張をBTPへ外出しすることで、S/4HANA本体のアップグレードと拡張の改修を切り離せる。

実案件の担当業務を4つの柱に分解する

実案件で示される担当業務は、大きく4つの柱に整理できます。①全体設計(BTP Architecture/Cloud Architecture)、②連携・拡張(Side-by-Side Extension/IF・Batch Architecture/Integration Suite)、③API・イベント(API管理/Event Mesh)、④データ(データ移行/マスタ整流化)です。注目したいのは④の「移行」と「整流化」が担当に含まれる点で、新規開発だけでなく既存のインタフェースやマスタをどう移し、どう整えるかまでが設計対象になります。

BTPテクニカルアーキテクトが担う4本柱(全体設計・連携拡張・APIイベント・データ)
図2:BTPテクニカルアーキテクトが担う4本柱。「作る」だけでなく「移す・整流化する」比重が高いのが、S/4HANA周辺案件の特徴。
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用語:Side-by-Side拡張とは

S/4HANAコアの外側(BTP上)にアプリケーションを作り、APIやイベントで本体と連携する拡張方式です。コア内部を直接拡張する「on-stack拡張」(ABAP Cloudなど)と対比して使われます。Clean Coreでは、このSide-by-Sideが拡張の主戦場になります。

02POINTS 求められる5つのスキル

必須として挙げられるのは、①SAP BTPの経験 ②クラウドアーキテクチャ設計 ③API設計 ④システム連携アーキテクチャ設計 ⑤Java/Springの開発経験です。この5つを並べると、求める人物像がはっきり見えてきます。

必須スキルが示す「設計と実装の往復」

①〜④はアーキテクトとして自然な要件です。本当のメッセージは⑤にあります。Java/Springの開発経験は、図を描くだけでなく、CAP(Cloud Application Programming Model)のJava実装やSpring Bootのマイクロサービスを自分で書けることを意味します。実装の解像度がないと、設計は空論になります。BTPのアーキテクトは「実装できる設計者」であることが求められているのです。

②クラウドアーキテクチャ設計も軽視できません。SAPの知識だけでは、可用性・スケーラビリティ・オンプレ接続(Cloud Connector)・認証基盤の設計はできません。SAP領域とクラウド領域、両方の語彙を持つことが前提になります。

歓迎スキルが示す「クラウドネイティブな連携」

歓迎スキルは、Integration SuiteやABAP CloudといったSAP側の技術と、Kafka・RabbitMQ・ActiveMQ・Azure Service Bus・Amazon EventBridgeといった非SAPのメッセージング基盤の2グループに分かれます。後者が並んでいる点が重要です。BTPの中だけで完結する設計ではなく、他クラウドのサービスと組み合わせて連携を設計できるかが評価対象になります。

歓迎スキル読み取れる設計領域
Integration Suite(CPI)既存IFのクラウド移行、アダプタ選定、監視と再処理
ABAP CloudClean Core準拠のon-stack拡張(RAP)
Event Mesh同期IFの非同期化、pub/subによる疎結合
ETL/EAI・Migration Cockpitデータ移行、クレンジング、リハーサル設計
Kafka/RabbitMQ/ActiveMQメッセージング基盤の設計・運用
Azure Service Bus/Amazon EventBridge他クラウドと組み合わせたハイブリッド連携
  1. BTPの経験を棚卸しする。Cloud Foundry/Kyma/ABAP Environmentのどの実行環境で、どのサービスを「設計した」のかを案件ごとに書き出します。構築作業だけでなく方式判断の経験を探します。
  2. Java/Springの実装経験をSAP案件以外も含めて記載する。CAP(Java)やSpring Bootで何を作ったかが、設計と実装を往復できる証拠になります。
  3. 連携の設計経験を数字で示す。移行したIF本数、イベント化した件数、再処理を自動化した割合など、規模と効果を添えます。
  4. API設計は「公開・版管理・認証・レート制御」の4点で語る。ツール名の羅列ではなく、誰にどう公開し、どう統制するかを説明できるようにします。
  5. データ移行とマスタ整流化の経験を加える。移行リハーサルの回数と手戻り件数があると、設計の実効性を示せます。

複数名の募集は「役割を分けて募集している」

複数名での募集は、1人が全部を満たす必要はないという意味でもあります。Integration Suiteが強い、データ移行が強い、といった軸で自分がどのポジションに入れるかを明確にすると、提案が通りやすくなります。

03INSIGHT チームでの役割分担とキャリア価値

複数名での募集は、役割を分けて設計を回す体制を意味します。BTP上の技術要素を分担すると、①全体設計 ②連携 ③API・イベント ④データというポジションに自然に分かれます。単独で全部を抱えるのではなく、分担して相互にレビューできることが前提です。

BTP上の拡張・連携を支える6つの技術要素(拡張方式・実行基盤・連携・API・イベント・データ)
図3:BTP上の拡張と連携を支える6つの技術要素。このうちどこまでを設計できるかが、アーキテクトとしての担当範囲になる。

分担には、相互レビューが成立するという利点があります。連携の設計者はAPI設計をレビューでき、データの設計者は連携方式をレビューできる。設計の質は人数ではなく、レビューの密度で決まるため、この体制には合理性があります。

キャリアの観点では、BTPはSAP領域の中でも経験者が薄い分野です。S/4HANA移行は2027年の保守期限を控えて案件が続き、その多くがClean Core方針を採ります。つまり、拡張と連携の設計ができる人材への需要は、移行が一巡するまで続くという構造です。ABAPだけ、Javaだけではなく、両方の語彙を持つ人材の希少性は高い状態が続いています。

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豆知識:Clean Coreは「禁止」ではなく「分離」

Clean Coreはコアを一切触ってはいけないという意味ではありません。標準で足りる要件は標準で実装し、足りない部分を明確に分離して外に置く、という設計原則です。拡張の総量を減らすことより、拡張の在処を説明できることのほうが重要です。

まとめ

  • BTPテクニカルアーキテクトの役割は「拡張の置き場所とつなぎ方の設計」
  • Clean Coreにより、コア改造からBTPへの外出しへ流れが変わった
  • 必須5スキルの核心はJava/Springの実装経験=設計と実装の往復
  • 歓迎スキルにKafka・Service Bus・EventBridgeが並び、クラウドネイティブ連携が評価される
  • 複数名の募集は役割分担が前提。自分が入れるポジションを明確にして提案する

出典・参考

※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-09-17)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。

04FAQ よくある質問

ADTナビゲーター
BTPのアーキテクトを目指すとき、よく出る質問をまとめました。自分の経験がどこに当てはまるか、照らし合わせてみてください。
SAP BTPの経験が浅くても、テクニカルアーキテクトを目指せますか?

目指せます。BTPのサービス経験そのものより、「クラウドで設計できるか」と「実装できるか」の比重が大きい案件です。Java/Springやメッセージング基盤(Kafka・Service Busなど)の経験が厚ければ、BTPの知識は案件の中で補えます。まずはIntegration SuiteやCAPのハンズオンで語彙を揃えるのが現実的です。

Javaの経験がないと難しいですか?

必須要件にJava/Springが入っている以上、実装を伴う設計を担うポジションでは必要です。ただし募集枠のすべてがJava実装を担当するわけではなく、API設計やデータ移行が主担当のポジションもあります。応募・提案の際は、自分の担当範囲と実装経験を切り分けて伝えると誤解が減ります。

ABAP CloudとSide-by-Side拡張はどう使い分けますか?

判断軸は「コアのデータや処理にどれだけ近いか」です。コアの業務データを直接扱い、標準に近い振る舞いが必要ならABAP Cloud(on-stack、RAP)が適します。独自のUIや外部サービス連携、コアを汚さずに独立性を持たせたい場合はSide-by-Side(CAPやSpring Boot)が適します。両方を設計できると、要件に応じて選べる強みになります。

テクニカルアーキテクトに資格は必要ですか?

必須ではありません。SAP認定資格は基礎知識の証明にはなりますが、設計力の評価は「どの方式をなぜ選んだか」を説明できる経験に集約されます。資格取得の過程で用語と選択肢を整理しておくことは、提案時の説明力向上に有効です。

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この記事について

執筆

アラディンテクノロジー編集部

SAP導入・移行・運用支援の現場知見と、SAP Help Portalをはじめとする一次情報をもとに技術記事を執筆しています。

監修

劉 瑞

アラディンテクノロジー株式会社 代表取締役社長。SAP領域を中心に、基幹システムの導入・移行・運用支援に従事。

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