目次
この記事のポイント
- 品目マスタは「クライアント・プラント・保管場所」の3階層。同じ品目でもプラントごとに購買・MRP・評価の値を持つ
- MM01の初期画面で決めるのは品目タイプ・業種・品目番号の3つ。この3つで「どのビューが使えるか」が決まる
- ビューは後からMM02で追加できるが、プラント・保管場所を跨ぐ追加と評価系の変更は影響が大きい
- 品目マスタは購買発注・在庫移動・会計転記すべての起点。項目の設計ミスは伝票と決算にそのまま波及する
01WHAT 品目マスタとは何か——1品目に「3つの階層」と「12のビュー」がぶら下がる
品目マスタ(Material Master)は、調達・生産・在庫・販売・会計で共通に使う品目の台帳です。SAPでは「1つの品目=1つのマスタ」ですが、その中身は組織レベルごとに分かれています。ここを理解しないまま入力すると、「本社では登録できたのに、なぜかプラントで発注できない」という典型的なつまずきが起きます。
階層は3つです。クライアントレベルは全社共通の基本情報(品目番号・品目タイプ・名称・単位)、プラントレベルは購買やMRP、在庫評価の単位、保管場所レベルは倉庫ごとの在庫数量を管理します。同じ品目でも、プラントが違えば購買グループもMRPタイプも評価クラスも別の値を持てます。
もう1つの軸が「ビュー」です。品目マスタの画面は、業務領域ごとに12前後のビューに分かれています。ビューは単なる入力タブではなく、「その項目をどの業務が読むか」のまとまりです。購買ビューの項目は購買発注書が、MRPビューは所要量計算が、会計ビューは在庫評価と勘定転記が参照します。
| 階層 | 管理する内容 | 代表的なビュー | 登録時に入力する場面 |
|---|---|---|---|
| クライアント | 品目番号・品目タイプ・名称・基本単位・重量 | 基本データ1/基本データ2 | 全社で1回だけ登録する |
| プラント | 購買・MRP・在庫評価・原価計算 | 購買/MRP1〜4/会計1・2/原価計算 | プラントごとに1回。拠点追加のたびに必要 |
| 保管場所 | 倉庫ごとの在庫数量と保管条件 | 保管場所データ | 在庫を持つ保管場所ごとに登録 |
「品目マスタは1つ」だが「1画面で全部入る」わけではない
MM01では複数のビューをまとめて選択できますが、入力する組織レベル(プラント・保管場所)はビュー選択の後に指定します。新規拠点の立ち上げでは、既存プラントの値を参照してコピーできるため、「基準プラントを1つ決めて、そこから横展開する」のが最も早く、値のばらつきも防げます。
02POINTS MM01の初期画面——品目タイプ・業種・品目番号で入力できる項目が決まる
MM01の初期画面で入力するのは、品目番号・品目タイプ・業種の3項目です。この3つが、その後のビューの選択肢と必須項目を決めます。ここを間違えると、後工程で「このビューが出てこない」「この項目がグレーアウトしている」という状態になります。
品目タイプは品目の性格(原材料・製品・半製品・サービスなど)を決め、番号範囲と標準ビューを制御します。代表的なのは原材料(ROH)、貿易商品(HAWA)、製品(FERT)、半製品(HALB)、サービス(DIEN)です。業種は業界区分(機械・化学・小売など)で、項目選択グループと組み合わさって画面の項目構成を変えます。
| 品目タイプ | 用途 | 標準で使うビュー | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ROH(原材料) | 購買して在庫を持つ資材 | 購買・MRP・会計・原価計算 | 評価クラスと勘定設定が必須。在庫評価の対象 |
| HAWA(貿易商品) | 仕入れてそのまま販売する商品 | 購買・MRP・会計 | SDと連携する場合は販売ビューも検討 |
| FERT(製品) | 生産して販売する完成品 | MRP・会計・原価計算・販売 | 生産管理(PP)側の設定と整合が必要 |
| DIEN(サービス) | 在庫を持たないサービス | 購買・会計(在庫なし) | 数量管理・在庫評価の対象外になる |
品目番号は「内部採番」と「外部採番」を先に決める
品目番号は、SAPが自動で採番する内部採番と、自社の品目コードを入力する外部採番の2方式があります。番号範囲(Tコード:MMNR)で品目タイプごとに方式を決めるため、採番方式は品目タイプの設計とセットです。既存の品目コード体系がある場合は外部採番、新規に体系を作る場合は内部採番が向きます。桁数と先頭文字のルールは後から変更できないため、移行前に確定させてください。
MM01の操作手順——4ステップ
- MM01を起動し、品目番号・品目タイプ・業種を入力する——内部採番の場合は品目番号を空欄にして実行します。既存品目を参照する場合は「参考品目(Copy from)」で値をコピーできます
- ビューを選択する——業務で必要になるビューにチェックを入れます(基本データ1・2/購買/MRP1〜4/会計1・2/原価計算など)。後から追加できるので、初回は必須ビューに絞って構いません
- 組織レベル(プラント・保管場所)を指定する——購買・MRP・会計はプラント単位、在庫数量は保管場所単位です。複数プラントへ同時展開する場合はここで複数指定できます
- 各ビューの項目を入力して保存する——必須項目は赤い枠ではなくメッセージで示されます。保存後はMM03(照会)で入力漏れを確認するのが実務的です
ビューの「後から追加」は簡単、組織レベルの追加は重い
ビューの追加(MM02)は日常的に行われますが、プラントを後から追加すると、そのプラント用の購買・MRP・会計の値を一通り入力する必要があります。拠点統合や新工場の立ち上げでは、品目数×プラント数の入力が発生するため、参照コピー(MM01の「参考品目」)と一括登録(LSMW・BAPI)を最初から計画に入れてください。
03STEP 入力項目チェックリスト——購買・MRP・会計で押さえるべきポイント
ビューを選んだら、実務で必ず確認される項目を押さえます。すべてを完璧に入れる必要はありませんが、購買・MRP・会計の3ビューは伝票と決算に直結するため、初回登録で確定させるのが安全です。
| ビュー | 代表的な項目 | 業務への影響 |
|---|---|---|
| 購買 | 購買グループ・発注単位・購買情報レコードの更新可否 | 発注書の既定値と、情報レコードの自動更新の可否を決める |
| MRP1〜4 | MRPタイプ・MRPコントローラ・ロットサイズ・安全在庫・発注点 | 所要量計算の対象になるか、いつ・どれだけ発注するかを決める |
| 会計1・2 | 評価クラス・標準価格・移動平均価格・価格管理区分 | 在庫評価額と、入出庫時の勘定転記先を決める(自動転記の前提) |
| 原価計算 | 原価計算ロットサイズ・原価計算可否 | 標準原価の計算対象かどうか、原価見積の前提を決める |
- 購買ビュー:購買グループと発注単位を入れる——購買グループは発注書の既定値になり、購買実績の集計単位にもなります
- MRPビュー:MRPタイプを決める——PD(MRP)は所要量から自動で計画する、ND(発注点)は在庫が発注点を下回ったら補充する、といった運用の型をここで選びます
- MRPビュー:MRPコントローラとロットサイズを入れる——誰が計画を回すか、どれだけまとめて発注するかは、在庫と欠品のバランスに直結します
- 会計ビュー:評価クラスを入れる——評価クラスが、在庫の入出庫をどの勘定科目へ転記するかを決めます。ここが空だと在庫移動が会計に反映されません
- 会計ビュー:価格管理区分(標準価格/移動平均)を確認する——標準価格は差異分析がしやすい、移動平均は実勢価格を反映しやすい。どちらを選ぶかは品目の性格で決まります
- 保存後、MM03で必須項目とビューを確認する——登録直後は入力漏れに気づきにくいため、照会画面でビュー単位に確認するのが定着のコツです
品目タイプの標準ビューは OMS2 で決まる
品目タイプごとに「どのビューを必須にするか」「どの項目を非表示にするか」は OMS2 で定義されています。プロジェクトで画面を調整したい場合は、品目マスタではなく品目タイプの設定(OMS2)と項目選択グループ(OMSR)を確認してください。現場から「項目が足りない」と言われたときの原因は、多くの場合ここです。
04INSIGHT 後から変えられない項目と、変更時に止まる処理
品目マスタは「後から直せる」イメージがありますが、在庫や伝票が存在すると変更できない項目があります。代表的なのが、品目タイプと価格管理区分(標準価格/移動平均)です。評価クラスも、在庫を持つ状態での変更は在庫金額の再計算を伴うため、実務上は「新規品目として作り直す」判断になります。
また、保管場所データの削除も在庫がゼロでない限りできません。逆に言えば、初期登録の段階で「この品目をどのプラント・どの保管場所で使うか」を確定できていれば、稼働後の変更はほぼ発生しません。マスタ設計は、業務設計と同時に進めるのが最も安全です。
品目マスタの設計は、購買・在庫・会計の設定と密接に連動します。品目タイプと番号範囲の設定は品目マスタの設定:品目タイプ(OMS2)・マテリアルグループ(OMSF)・番号範囲(MMNR)、在庫評価の考え方はS/4HANAのMM設定⑤:品目タイプ(OMS2)・評価コントロール(OMWM)・評価クラス(OMSK)、登録先の拠点設計はプラントの定義方法:OX10の手順と保管場所(OX09)の作り方を図解で整理しています。
ADTでは、品目マスタの項目設計を単なる登録作業ではなく、購買・在庫・会計の業務設計と一体で支援しています。S/4HANA移行や拠点再編で品目の持ち方を見直す場合は、品目タイプ・評価クラス・プラント構成を最初に確定させることが、後戻りコストを最も小さくします。
まとめ
- 品目マスタは「クライアント・プラント・保管場所」の3階層。購買・MRP・評価はプラント単位で持つ
- MM01の初期画面は品目番号・品目タイプ・業種の3項目。この3つで使えるビューが決まる
- ビューは後からMM02で追加できるが、プラント追加は品目数×プラント数の入力が必要
- 購買・MRP・会計の3ビューは伝票と決算に直結するため、初回登録で確定させる
- 評価クラス(会計1)とMRPタイプ(MRP1)は、稼働後の変更コストが特に大きい
- 品目タイプの標準ビューはOMS2、番号範囲はMMNR。画面の項目構成は項目選択グループ(OMSR)で決まる
出典・参考
- Material Master(SAP Help Portal/SAP S/4HANA Sourcing and Procurement) https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_ON-PREMISE/af9ef57f504840d2b81be8667206d485/2b7eb65334e6b54ce10000000a174cb4.html
- SAP S/4HANA(オンプレミス)ドキュメント(SAP Help Portal) https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_ON-PREMISE
- SAP MM - Configuration(TutorialsPoint) https://www.tutorialspoint.com/sap_mm/sap_mm_configuration.htm
- 品目マスタの設定:品目タイプ(OMS2)・マテリアルグループ(OMSF)・番号範囲(MMNR) https://www.aladdin-techec.com/blog/sap-mm-config-material-master-setup.html
※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-10-31)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。Tコード・メニューパス・テーブル名はオンプレミス/Private Editionの標準機能に基づく一般情報です。
05FAQ よくある質問
MM01・MM02・MM03の違いは?
MM01は作成、MM02は変更、MM03は照会です。SAPのマスタ系トランザクションは01/02/03のサフィックスで統一されています。登録後にビューを追加したい場合はMM02を使います。
ビューはすべて選択しないといけませんか?
いいえ。業務で使うビューだけ選択できます。購買して在庫を持つ品目なら購買・MRP・会計が中心です。不足するビューは後からMM02で追加できますが、会計ビュー(評価クラス)は在庫が動き出す前に確定させてください。
品目番号は自動で採番されますか?
番号範囲(MMNR)の設定によります。内部採番ならSAPが自動で番号を振り、外部採番なら自社の品目コードを入力します。品目タイプごとに方式を決められるため、既存の品目コード体系がある場合は移行前に確定が必要です。
品目マスタは後から削除できますか?
在庫や伝票が存在する品目は削除できません。業務上使わなくなった場合は削除ではなく、ブロック(調達ブロック・販売ブロック)で新規の取引を止めるのが一般的です。