この記事のポイント
- F-90(仕入先からの購入)で資産購入を1伝票で処理できる
- 記帳キー31(仕入未払金・貸方)+70(資産取得原価・借方)+取引タイプ100
- 転記と同時に資産マスタへ資本化され、減価償却の起算日が確定する

WHAT 固定資産のライフサイクルとFI-AA
固定資産の管理は、経理業務の中でも地味に見えて、実は会社の財務諸表に長期間影響を与え続ける重要な領域です。オフィスのPCも工場の設備も、いったん「資産」として登録されると、そこから数年にわたって減価償却費として損益計算書に現れ続けます。
SAPでは、有形固定資産・建設仮勘定(在建工程)・無形資産・長期前払費用などを「固定資産(FI-AA)」モジュールで一元管理します。ひとつの資産は取得(購入)から始まり、使用期間中は毎期の減価償却が自動計算され、最終的には除却・売却でライフサイクルを終えます。この間、システムは常に総勘定元帳(FI)との整合性を保ち続けます。資産ごとの記録は「資産マスタ」と呼ばれ、一般情報・勘定科目の割当・計上情報(資本化日付など)・評価パラメータ(減価償却方法や耐用年数)を持ち、以降のすべての取引の土台になります。
POINTS F-90で学ぶ資産購入の3つのポイント
- ① 画面は2ブロック構成:ヘッダー(伝票日付・伝票タイプ・会社コード・参照番号)と、明細部分(記帳キーと金額)。もっとも基本的な購入シーンは、社外の取引先(仕入先)から資産を購入するケースです
- ② 記帳キーの意味:記帳キー「31」は仕入先に対する未払金を貸方に計上、記帳キー「70」は資産科目の借方(取得原価)に計上し、取引タイプ「100」で「外部購入による資本化」であることを明示します
- ③ 転記(Post)で何が起きるか:総勘定元帳への転記と、資産マスタへの資本化情報(取得日・帳簿価額)の反映が同時に実行されます。伝票番号が発行された時点で減価償却の起算日も確定し、「買った瞬間」に将来の償却スケジュールの起点がセットされます
INSIGHT なぜこの一体感が重要なのか
Excelや紙の台帳で固定資産を管理していると、購入記録と減価償却計算、総勘定元帳への転記がそれぞれ別の作業として存在し、月末になるたびに数字を突き合わせる手間が発生しがちです。SAPのFI-AAでは、購入・振替・除却・減価償却のすべての事象が「資産マスタ」を軸にリアルタイムで連動するため、会計期間を締める際の科目照合(FIとAAの残高一致確認)の負荷が大きく下がります。これは単なる操作手順の違いではなく、「経理担当者が何にどれだけ時間を使うか」を変える設計思想の違いです。
S/4HANA移行を検討中の企業は、S/4HANA移行、最初に押さえるべき5つのポイントもご覧ください。ERP・会計・ガバナンス関連の用語は、【IT用語解説】ビジネス・ガバナンス編で解説しています。本記事の内容は note でも公開中です(note 公式アカウント)。
FAQ よくある質問
F-90とは何ですか?
仕入先から資産を購入する際に使うSAPの取引です。1つの伝票の中で「仕入先への未払金」と「資産の取得原価」を同時に計上できます。
記帳キー31と70は何を意味しますか?
31は仕入先への未払金(貸方)、70は資産科目の借方(取得原価)です。取引タイプ100により「外部購入による資本化」であることを明示します。
減価償却の起算日はいつ決まりますか?
伝票の資本化日付(取得日)を基準に、転記時に資産マスタへ反映され確定します。購入処理の完了時点で償却スケジュールの起点がセットされます。
出典・参考
- SAP S/4HANA固定資産管理 ①資産を「買う」ときシステムの中で何が起きているか(note 公式アカウント) https://note.com/adt_tech/n/n44fb9255a13a
- 『SAP S4 HANA FICO 固定資産ユーザーマニュアル』(社内資料・非公開)
※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-08-17)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。