SAP FI/MMで学ぶ「消費税計算と会計転記」完全ガイド
- teis11
- 7月8日
- 読了時間: 8分
― 税計算表 TAXJP・条件タイプ・勘定キーをやさしく解説 ―
公開日:2025-07-08
カテゴリ:SAP FI/MM・日本税制対応・消費税
対象読者:SAP導入コンサルタント/社内情シス/FI・MMキーユーザ

じめに
日本で SAP ERP を運用するうえで避けて通れないのが 消費税の自動計算 と 正しい勘定コードへの転記 です。
本記事では FI(財務会計)と MM(購買管理)を中心に、標準設定である税計算表 TAXJP の構造から勘定キー・勘定コード決定までをステップ-バイ-ステップで解説します。
(※ SD の税計算ロジックは別途扱うため、ここでは触れません)
2. 税計算表 TAXJP の基本
用語 | 意味 | 本記事で見るポイント |
税計算表(Tax Procedure) | 消費税率計算・勘定転記ロジックを持つ制御表 | TAXJP に割当てられた 条件タイプ と 勘定キー |
国コード割当 | 会社コードの国コード → 税計算表 を決定 | JP → TAXJP が標準 |
IMG パス | IMG → 財務会計共通設定 → 消費税 → 基本設定 → チェック: 税計算表 | Customizing 画面で確認 |
TAXJP には代表的に以下 4 つのステップが設定されています。
ステップ | 条件タイプ | 役割 | 勘定キー |
100 | BASB | 課税基準額(税抜売上/仕入) | – |
110 | MWAR | 仮受消費税(切捨て) | MWS |
120 | MWVR | 仮払消費税(切捨て) | VST |
130 | MWVY | 仮払消費税(切上げ) | NVV |
Tips:TAXJP は SD の価格決定表と同じ「条件テクニック」形式。開始ステップ = 100 がポイントで、BASB の金額を基準に MWAR/MWVR が % 計算します。
3. 条件タイプの中身を覗く
3-1. BASB(課税基準額)
計算タイプ: 固定額
条件カテゴリ: K = 税抜基準額
ポイント: 実際の売上/仕入明細金額をそのまま保持する特殊タイプ。ここに数量×単価=金額が格納されます。
3-2. MWAR / MWVR(仮受・仮払)
項目 | 設定値 |
条件クラス | D = 税 |
計算タイプ | A = % |
丸め規則 | B = 切捨て |
検索順序 | MWST(税率テーブルを検索) |
開始ステップ 100 → BASB を基準額として参照
計算結果で 1 円未満の端数は切捨て
税率は「出荷国 + 税コード」キーで条件テーブル 003 から取得
4. 検索順序 MWST と条件テーブル 003
キー | 中身 |
出荷国 | 会社コードの国コード(例:JP) |
税コード | A0 / A8 / V1 / V8 … など 2 文字 |
動き:会計伝票(FB60)や MM 請求書照合(MIRO)で 税コード を入力すると、会社コードの国コード と組み合わせて条件テーブル 003 を検索し、消費税率を返却します。
5. 税コードのパラメータ
パラメータ | 用途 | 例 |
税タイプ | A = 仮受/V = 仮払 | V1 → 仮払8% |
確認ID | 手入力額と自動計算額の乖離チェック (ON/OFF) | ON なら差額超過時にエラー |
許容範囲% | 乖離を許容するパーセンテージ | 未設定=1 円許容 |
6. 例:仕入先請求書(FB60)の計算フロー
会社コード JP01(国コード JP) で請求書入力
明細に 税コード V1(8% 仮払) + 税抜金額 10,000 円
システムは
TAXJP を採用
BASB = 10,000
MWVR = 10,000 × 8% = 800 円(切捨てなし)
勘定キー VST → 勘定コード 1482002 仮払消費税 へ自動転記
仕入先 10,800 | Dr
仕入高 10,000 | Cr
仮払消費税 800 | Cr ← VST で決定
7. 勘定キーと勘定コード割当
設定パス:IMG → 消費税 → 転記 → 定義: 税勘定
割当単位:勘定コード表 + 勘定キー
高度設定:「ルール」画面で 税コード別 に勘定コードを分けることも可能(影響範囲に注意)
8. 会計転記までの全体図
flowchart TD
A[入力: 会社コード & 税コード] --> B[税計算表 TAXJP]
B --> C[条件タイプ BASB (課税基準額)]
C --> D[MWAR / MWVR 税額計算]
D --> E{検索順序 MWST<br>条件テーブル003}
E --> D
D --> F[勘定キー MWS / VST]
F --> G[勘定コード 1481000 / 1482002]
G --> H[FI会計伝票ポスト]
9. まとめと運用ポイント
税計算表は国コード単位:複数会社コードで共有されるため変更影響は大。
条件タイプの「開始ステップ」と「丸め規則」 を押さえれば計算ロジックが読める。
税率管理は条件テーブル003:マスター更新は本番前月に “輸入一括” が安心。
勘定キー割当は会計方針とセットで:税コード別勘定分けは期末仕訳の省力化に有効。
テストは FB60 / MIRO / F-47 など複数トランザクションで端数差異を確認。
次回予告:SD モジュール(受注処理)における消費税計算とインボイス転記の違いを解説します。お楽しみに!
参考テーブル一覧
テーブル | 役割 | クライアント依存 |
T683 / T683S | 税計算表・ステップ明細 | 〇 |
T682 / T682I | 検索順序・条件テーブル割当 | × |
T007A / T007B | 税コード & 勘定キー設定 | 〇 |
T030K / T030R | 税勘定コード割当 | 〇 |
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SAP FI/MMで学ぶ「消費税計算と会計転記」完全ガイド
― 税計算表 TAXJP・条件タイプ・勘定キーをやさしく解説 ―
公開日:2025-07-08
カテゴリ:SAP FI/MM・日本税制対応・消費税
対象読者:SAP導入コンサルタント/社内情シス/FI・MMキーユーザ
1. はじめに
日本で SAP ERP を運用するうえで避けて通れないのが 消費税の自動計算 と 正しい勘定コードへの転記 です。
本記事では FI(財務会計)と MM(購買管理)を中心に、標準設定である税計算表 TAXJP の構造から勘定キー・勘定コード決定までをステップ-バイ-ステップで解説します。
(※ SD の税計算ロジックは別途扱うため、ここでは触れません)
2. 税計算表 TAXJP の基本
用語 | 意味 | 本記事で見るポイント |
税計算表(Tax Procedure) | 消費税率計算・勘定転記ロジックを持つ制御表 | TAXJP に割当てられた 条件タイプ と 勘定キー |
国コード割当 | 会社コードの国コード → 税計算表 を決定 | JP → TAXJP が標準 |
IMG パス | IMG → 財務会計共通設定 → 消費税 → 基本設定 → チェック: 税計算表 | Customizing 画面で確認 |
TAXJP には代表的に以下 4 つのステップが設定されています。
ステップ | 条件タイプ | 役割 | 勘定キー |
100 | BASB | 課税基準額(税抜売上/仕入) | – |
110 | MWAR | 仮受消費税(切捨て) | MWS |
120 | MWVR | 仮払消費税(切捨て) | VST |
130 | MWVY | 仮払消費税(切上げ) | NVV |
Tips:TAXJP は SD の価格決定表と同じ「条件テクニック」形式。開始ステップ = 100 がポイントで、BASB の金額を基準に MWAR/MWVR が % 計算します。
3. 条件タイプの中身を覗く
3-1. BASB(課税基準額)
計算タイプ: 固定額
条件カテゴリ: K = 税抜基準額
ポイント: 実際の売上/仕入明細金額をそのまま保持する特殊タイプ。ここに数量×単価=金額が格納されます。
3-2. MWAR / MWVR(仮受・仮払)
項目 | 設定値 |
条件クラス | D = 税 |
計算タイプ | A = % |
丸め規則 | B = 切捨て |
検索順序 | MWST(税率テーブルを検索) |
開始ステップ 100 → BASB を基準額として参照
計算結果で 1 円未満の端数は切捨て
税率は「出荷国 + 税コード」キーで条件テーブル 003 から取得
4. 検索順序 MWST と条件テーブル 003
キー | 中身 |
出荷国 | 会社コードの国コード(例:JP) |
税コード | A0 / A8 / V1 / V8 … など 2 文字 |
動き:会計伝票(FB60)や MM 請求書照合(MIRO)で 税コード を入力すると、会社コードの国コード と組み合わせて条件テーブル 003 を検索し、消費税率を返却します。
5. 税コードのパラメータ
パラメータ | 用途 | 例 |
税タイプ | A = 仮受/V = 仮払 | V1 → 仮払8% |
確認ID | 手入力額と自動計算額の乖離チェック (ON/OFF) | ON なら差額超過時にエラー |
許容範囲% | 乖離を許容するパーセンテージ | 未設定=1 円許容 |
6. 例:仕入先請求書(FB60)の計算フロー
会社コード JP01(国コード JP) で請求書入力
明細に 税コード V1(8% 仮払) + 税抜金額 10,000 円
システムは
TAXJP を採用
BASB = 10,000
MWVR = 10,000 × 8% = 800 円(切捨てなし)
勘定キー VST → 勘定コード 1482002 仮払消費税 へ自動転記
仕入先 10,800 | Dr
仕入高 10,000 | Cr
仮払消費税 800 | Cr ← VST で決定7. 勘定キーと勘定コード割当
設定パス:IMG → 消費税 → 転記 → 定義: 税勘定
割当単位:勘定コード表 + 勘定キー
高度設定:「ルール」画面で 税コード別 に勘定コードを分けることも可能(影響範囲に注意)
8. 会計転記までの全体図
flowchart TD
A[入力: 会社コード & 税コード] --> B[税計算表 TAXJP]
B --> C[条件タイプ BASB (課税基準額)]
C --> D[MWAR / MWVR 税額計算]
D --> E{検索順序 MWST<br>条件テーブル003}
E --> D
D --> F[勘定キー MWS / VST]
F --> G[勘定コード 1481000 / 1482002]
G --> H[FI会計伝票ポスト]9. まとめと運用ポイント
税計算表は国コード単位:複数会社コードで共有されるため変更影響は大。
条件タイプの「開始ステップ」と「丸め規則」 を押さえれば計算ロジックが読める。
税率管理は条件テーブル003:マスター更新は本番前月に “輸入一括” が安心。
勘定キー割当は会計方針とセットで:税コード別勘定分けは期末仕訳の省力化に有効。
テストは FB60 / MIRO / F-47 など複数トランザクションで端数差異を確認。
次回予告:SD モジュール(受注処理)における消費税計算とインボイス転記の違いを解説します。お楽しみに!
参考テーブル一覧
テーブル | 役割 | クライアント依存 |
T683 / T683S | 税計算表・ステップ明細 | 〇 |
T682 / T682I | 検索順序・条件テーブル割当 | × |
T007A / T007B | 税コード & 勘定キー設定 | 〇 |
T030K / T030R | 税勘定コード割当 | 〇 |
著者プロフィール
Yunfeng Liu|SAP Certified Application Associate
15 年以上、製造・商社向け SAP FI/MM 導入に従事。現在は東京でデジタル変革を支援する Aladdin-Techec コンサルティング部門責任者。
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