ADT AladdinALADDIN TECHNOLOGY

ホーム記事 › SAP・MM

BLOG — SAP MM

特殊調達・特殊在庫とは?預託・外注・パイプライン・在庫転送の仕組み

預託在庫(コンサインメント)や外注、パイプライン調達など、会社に帰属しない在庫を扱うのが特殊調達です。6つの特殊在庫タイプの特徴と使い分けを解説します。

この記事のポイント

  • 特殊在庫は「会社に帰属しない在庫」を会社の外または特別な場所で管理する仕組みで、6タイプに分類される
  • 代表例は預託在庫・外注・パイプライン・リターナブル梱包・在庫転送(STO)・第三者処理
  • タイプごとに移動タイプ・勘定設定・購買情報レコードが異なり、設定ミスは在庫評価や月次決算に影響する
  • 選択の判断軸は「在庫の場所」と「所有権の移転タイミング」の2つ
ADTナビゲーター
特殊在庫って名前は聞くけど、預託と外注とSTOの違いって何?って聞かれること、本当に多いんです。今日は6タイプをまとめて整理しますね」

01WHAT 特殊在庫とは?「会社に帰属しない在庫」の仕組み

特殊在庫(Special Stock)とは、会社に帰属しない在庫、または特定の場所・条件で特別に管理される在庫を指します。たとえば預託在庫は自社の倉庫に置かれているものの所有権は仕入先にあり、パイプライン調達は水道や電力のように使用した分だけ支払う仕組みです。SAPではこのような在庫を通常在庫(Unrestricted Stock)と明確に区別して管理し、調達タイプ(購買情報レコード)や移動タイプも専用のものを使います。

なぜ「特殊」なのか——通常調達との3つの違い

通常調達は「自社の倉庫に入庫し、自社が所有し、購入時に支払う」という単純な流れです。一方、特殊調達は次のいずれかが「通常」と異なります。

  • 在庫の場所——仕入先工場・パイプライン・他プラントなど、自社倉庫以外にある
  • 所有権——自社敷地内でも所有権が仕入先にある(預託・リターナブル梱包)
  • 支払タイミング——消費時・使用量精算時など、購入時以外に支払いが発生する
💡

在庫カテゴリで見分ける

SAPの在庫は「在庫カテゴリ(Stock Category)」で区分されます。通常在庫は無印(空欄)、預託在庫はK(Consignment)、外部委託在庫はO(Subcontracting)、プロジェクト在庫はQ、得意先在庫はWなど。このコードが違うだけで、評価・棚卸・勘定がすべて変わります。

6つのタイプは「どこに在庫があるか」で整理できる

特殊調達・特殊在庫は、SAPの標準機能として6タイプに整理できます。①預託在庫(Consignment)、②外注(Subcontracting)、③パイプライン(Pipeline)、④リターナブル梱包(Returnable Packaging)、⑤在庫転送(Stock Transfer / STO)、⑥第三者処理(Third-party Order)です。全体像を図1に示します。

特殊調達・特殊在庫の6タイプ。預託在庫は自社倉庫・所有権は仕入先、外注は仕入先工場・所有権は自社(支給品)、パイプラインはパイプライン内・仕入先所有、リターナブル梱包は自社預かり・仕入先所有、在庫転送は他プラント・自社所有、第三者処理は仕入先から顧客直送
図1:特殊調達・特殊在庫の6タイプ——在庫の場所と所有権で分類できる

02POINTS 6つの特殊調達タイプを比較する

ここからは6タイプそれぞれの特徴・代表Tコード・在庫カテゴリを、実務で迷いやすいポイントを交えて解説します。

① 預託在庫(Consignment)——自社倉庫でも所有権は仕入先

預託在庫は、自社の敷地内に在庫を置くが、所有権は仕入先に残したままにする方式です。消費(払出)した時点ではじめて支払義務が発生するため、在庫としての資金負担を抑えられます。購買情報レコードの調達タイプは「預託(K)」、発注書タイプも預託(K)を使います。入庫時は移動タイプ101(在庫カテゴリK)、消費時は移動タイプ411で通常在庫へ変換されます。

預託在庫の処理フロー。預託発注(ME21N・調達タイプK)→ 預託在庫へ入庫(MIGO・在庫カテゴリK)→ 消費(移動タイプ411で通常在庫へ変換・支払義務発生)→ 消費分のみ請求(MIRO)という流れ
図2:預託在庫(Consignment)の処理フロー——消費した分だけ支払う

預託のメリット

需要が読めない部品や頻繁に消費する低価格品に適しています。在庫リスクを仕入先側に持たせられるため、在庫金額の削減・回転率の向上につながります。ただし棚卸しは「預託分(K)」と「自社分」を分けて数える必要があります。

② 外注(Subcontracting)——部品を支給して加工を委託する

外注は、自社の部品を仕入先に支給し、加工後の完成品を受け取る方式です。発注書のアイテムカテゴリは「L(外注)」で、発注書には支給する部品のリスト(外注部品)を含めます。部品の支給は移動タイプ541(在庫カテゴリO・外部委託在庫)、完成品の受入は移動タイプ543で行われ、受入時に支給部品が自動的に消費されます。

外注の処理フロー。外注発注(ME21N・アイテムカテゴリL)→ 部品を支給(MB1B 541・在庫カテゴリO)→ 完成品を受入(MIGO 543)→ 加工費を請求(MIRO)の流れと、未使用部品の返却(542)
図3:外注(Subcontracting)の処理フロー——支給と受入を在庫カテゴリOで管理する
⚠️

外注残高の管理に注意

支給した部品は仕入先の手元にあるため、外部委託在庫(O)として残高が残ります。放置すると「部品は出たのに完成品が入らない」状態になるため、外注残高レポート(MBLB)で定期的に確認し、過不足を調整しましょう。

③ パイプライン(Pipeline)——継続供給品を使用量で精算

パイプライン調達は、水道・電力・ガスなどパイプライン経由で随時供給される品目を、使用量に応じて定期精算する方式です。購買情報レコードの調達タイプは「パイプライン(P)」で、在庫としては管理せず、請求書照合(MIRO)で使用量分を精算します。実在庫を持たないため、棚卸の手間がありません。

④ リターナブル梱包——預かり資材を返却まで管理

リターナブル梱包(Returnable Packaging)は、パレット・コンテナ・ドラムなど仕入先所有の梱包材を預かり、返却するまで管理する方式です。在庫カテゴリは預託(K)と似た扱いで、入荷時に受け取り(451)、返却時に払い出します(452)。返却漏れは「預かり資材の滞留」となり、監査や取引先との貸借確認の原因になるため注意が必要です。

⑤ 在庫転送(STO)——自社の他拠点から調達する

在庫転送(Stock Transfer Order)は、同一企業内で、受入プラントが供給プラントに対して発注する特殊な発注書です。発注書タイプは「在庫転送(U)」で、受入側はMIGOで移動タイプ351(プラント間転送)により入庫します。社内取引のため外部の仕入先は登場せず、在庫転送と管理を一元的に監視できます。

⑥ 第三者処理(Third-party)——受注を仕入先が顧客へ直送

第三者処理は、自社が受けた受注を外部仕入先に転送し、仕入先が顧客へ直接納品する方式です。自社に在庫を持たずに販売できるため、ECや小売などでよく使われます。販売管理(SD)の受注から購買(MM)の発注が自動生成され、納品・請求も仕入先から顧客へ直接行われます。在庫カテゴリは特殊な扱いになり、売上原価の計上タイミングに注意が必要です。

03STEP 特殊調達を設定・運用する5つの手順

  1. 購買情報レコードで調達タイプを決める——ME11で「標準・外注・パイプライン・預託」のいずれかを設定し、発注書のデフォルトを決めます
  2. 発注書タイプ・アイテムカテゴリを確認する——預託はK、外注はL、在庫転送はU、サービスはD。MM構成(IMG)で発注書タイプごとに番号範囲・勘定決定を定義します
  3. 在庫カテゴリと移動タイプを理解する——預託K(411/412)、外部委託O(541/543)、パイプラインは移動なし(精算)。運用マニュアルに明記します
  4. 勘定決定(OBYC)と自動転記を設定する——特殊在庫の消費・変換時にどの勘定へ転記されるかを、評価クラスごとに定義します
  5. 棚卸と残高レポートを定期運用に組み込む——預託分の棚卸(在庫カテゴリK)、外注残高(MBLB)、預かり梱包の貸借確認を月次ルーチンに追加します
🔎

豆知識:発注書タイプの「K」と「U」

預託在庫の発注書タイプは「K(Consignment)」、「U(Stock Transfer)」は在庫転送。どちらもMMの標準発注書タイプとして事前定義されており、番号範囲や承認ワークフローは組織に合わせてカスタマイズできます。

04INSIGHT 使い分けの判断軸とADTの支援

特殊調達の選択は、最終的には「在庫の所有権をいつ自社に移すか」と「どこで在庫を持つか」で決まります。頻繁に消費する低価格品は預託在庫、自社技術が不要な加工品は外注、公共料金などの継続供給品はパイプライン、拠点間の在庫移動は在庫転送(STO)が適しています。逆に、所有権の移転タイミングを間違えると、在庫評価・棚卸・月次決算のすべてに影響が出ます。

実際の導入では、「どの品目をどの調達タイプにするか」の判定基準づくりと、勘定設定(OBYC)・購買情報レコードの整備がセットで求められます。ADTではSAP MMの業務設計からカスタマイズ、移行・運用定着までを支援しています。入庫・請求の流れを財務目線で追いたい方は入庫/請求仮勘定(GR/IR)の消し込み方法を徹底解説もご覧ください。

まとめ

  • 特殊在庫は「会社に帰属しない在庫」を場所・所有権で区別して管理する仕組み
  • 6タイプ=預託・外注・パイプライン・リターナブル梱包・在庫転送・第三者処理
  • 預託は消費分だけ支払う(移動タイプ411)、外注は部品を支給して加工委託(541/543)
  • 選択の判断軸は「在庫の場所」と「所有権の移転タイミング」
  • 設定は購買情報レコード・発注書タイプ・在庫カテゴリ・勘定決定(OBYC)の4点が柱
  • 棚卸・残高レポート(MBLB)を月次ルーチンに組み込む

出典・参考

※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-09-01)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。Tコード・移動タイプはオンプレミス/Private Editionの標準機能に基づく一般情報です。

05FAQ よくある質問

ADTナビゲーター
実務でよく聞かれる質問をまとめました。「うちのケースだとどれを選べばいい?」の参考にどうぞ。
預託在庫と通常在庫の違いは?

預託在庫は自社敷地内にあっても所有権は仕入先にあります。消費(払出・移動タイプ411)した時点で支払義務が発生し、在庫評価の対象になります。通常在庫は購入時点で所有権が自社に移り、在庫金額に計上されます。

外注と通常発注の違いは?

通常発注は完成品を購入するだけですが、外注は自社の部品を仕入先に支給して加工してもらい、完成品を受け取ります。発注書(アイテムカテゴリL)に支給部品のリストを含めるのが特徴です。

在庫転送発注(STO)とは?

同一企業内で、受入プラントが供給プラントに対して発注する特殊な発注書(タイプU)です。社内取引として在庫転送され、外部の仕入先は登場しません。プラント間の在庫移動を一元管理できます。

パイプライン調達に向いている品目は?

水道・電力・ガスなど、パイプライン経由で継続供給される品目です。在庫を持たず使用量を定期精算するため、保管コストがかからず棚卸も不要です。

特殊調達の設計でお悩みなら
ADTのコンサルタントへ相談

預託・外注・在庫転送など特殊調達の業務設計とSAP設定を支援します。まずは無料相談から。

無料で相談する →
ABOUT

この記事について

執筆

アラディンテクノロジー株式会社 編集部

SAPコンサルティングとAI活用の現場知見をもとに、基幹業務のスマート化に役立つ情報をお届けしています。

監修

劉 瑞(リュウ ズイ)

代表取締役社長。SAP ABAP開発からコンサルティングまで15年、来日20年弱。「SAP×AI」の融合による価値創造に注力しています。

記事一覧に戻る