目次
この記事のポイント
- SAP Business Suite 7(ECC 等)は通常保守 2027 年末・延長保守 2030 年末という2段階の期限で考える
- 期限が同じでも、アドオン・データ量・周辺システムで実作業の期間は大きく変わる
- 最初に決めるのは移行方式(新規導入型/システムコンバージョン型)と移行範囲の線引き
- 2027年に「間に合わせる」より、2026年までに「止まらない運用」を確立することが実質的なゴール
- 棚卸し(アドオン・帳票・IF)とデータ品質の改善が、どの方式でも共通の重い工程になる
01WHAT 期限は「2段階」、難易度は「3つの要素」で決まる
SAP の保守方針では、SAP Business Suite 7(ECC 6.0、SAP ERP 6.0 など)の通常保守が 2027 年末で終了し、その後は有償の延長保守が 2030 年末まで提供される予定です。つまり期限は「2027 年」の一つではなく、コストとリスクをどう配分するかという2段階の経営判断になります。移行の実作業期間は、①アドオンの量と複雑度 ②データ量とクレンジングの必要性 ③周辺システムとの連携(IF)の数、の3要素で決まります。方式の検討より前に、この3要素を棚卸しすることが出発点です。
移行方式は2つ、判断軸は「業務を変えるか、変えないか」
代表的な方式は、既存の ERP を S/4HANA へ移行するシステムコンバージョン型(Brownfield)と、業務設計から見直して新規に構築する新規導入型(Greenfield)です。判断軸は「アドオンの量」「業務標準への適合度」「変革の許容度」です。アドオンが少なく現行業務を維持したい場合はコンバージョン型、業務プロセスそのものを見直したい場合やアドオンが過多な場合は新規導入型が候補になります。どちらでも、移行計画の重さは周辺システムとの連携とデータ品質に集中します。
よくある誤解:「方式を決めれば終わり」ではない
移行方式は出発点であり、成否を分けるのはその後の運用設計です。特に、移行後に発生する問い合わせ対応・追加設定・データ修正を誰が担うかが曖昧なまま進めると、本番直後に運用が破綻します。移行と同時に「運用の内製化」を計画に入れることが、2027年問題への実質的な答えになります。
補足:延長保守は「時間を買う」選択肢
延長保守は有償で提供されるため、単純な先延ばしではなくコスト判断になります。移行期間を確保するために計画的に使う、あるいは段階的に移行する場合の受け皿として設計するのが現実的です。
02POINTS 2027年問題に取り組む4つのステップ
- 現行システムを棚卸しする。アドオン・帳票・インターフェース・利用頻度を一覧化し、S/4HANAでそのまま使うもの/廃止するもの/標準機能に置き換えるものに分類します。
- 移行方式と範囲を決める。コンバージョン型か新規導入型かを、アドオン量・業務標準への適合度・変革許容度で判断し、対象会社・拠点の範囲を決めます。
- データ戦略を先に固める。移行対象データとクレンジング基準、過去データの保持期間、移行リハーサルの回数を決めます。ここが遅れると全体が遅れます。
- 移行後の運用体制を設計する。問い合わせ窓口、追加設定の手順、運用ルール(締め処理・移送)を文書化し、内製で回せる範囲を決めます。
「廃止できるもの」を先に決めると工数が減る
棚卸しでは「移行するか」より「廃止できるか」を先に議論します。使われていない帳票やアドオンを落とすだけで、テストとデータ移行の工数が大きく減ります。
03INSIGHT 期限対応を「変革の機会」に変える発想
2027年問題は制約ですが、同時に業務と IT の負債を整理する唯一の機会でもあります。アドオンと帳票の棚卸し、データ品質の改善、IF の API 化、運用の内製化は、移行のためだけでなく、その後の DX(データ活用・AI 活用)の前提条件になります。移行を「同じものを作り直す作業」と捉えると苦しく、「不要なものを捨てて基盤を整える機会」と捉えると計画が進みます。
当社は SAP の導入・移行・運用支援を主軸に、移行方式の検討、アドオン棚卸し、データ移行設計、BTP を活用した拡張、そして AI(ローカル LLM・RAG)による業務高度化までを一貫して支援しています。既存記事「S/4HANA移行、最初に押さえるべき5つのポイント」とあわせてご覧ください。
計画を立てるときに現実的な壁となるのが、予算と体制です。移行方式によって見積もりの前提が大きく変わるため、複数方式の概算を並べて経営判断の材料にすることを推奨します。また、社内のキーマン(業務を知る人)は移行期間中も通常業務を抱えています。棚卸しやテストの協力を得るには、早い段階で役割と時間を明示し、スケジュールに織り込んでおくことが必要です。
豆知識:Fit-to-Standard という進め方
標準機能をデモで確認しながら「合わせる/拡張する」を判断する進め方です。要件を一から書き起こす方式に比べ、標準機能の活用余地が見えやすく、アドオンの増加を抑えられます。
まとめ
- SAP Business Suite 7 は通常保守2027年末・延長保守2030年末という2段階で考える
- 実作業の期間はアドオン・データ・インターフェースの3要素で決まる
- 移行方式(コンバージョン型/新規導入型)は業務を変えるかで判断する
- 棚卸しでは「廃止できるもの」を先に決めて工数を減らす
- 移行と同時に運用の内製化を設計し、DX/AI活用の基盤にする
出典・参考
- SAP S/4HANA 公式(製品・移行の一次情報) https://www.sap.com/japan/products/erp/s4hana.html
- SAP Help Portal(機能・設定の一次情報) https://help.sap.com/
- SAP Community(移行事例・実務ナレッジ) https://community.sap.com/
※本記事は上記の公開情報をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-09-12)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。
04FAQ よくある質問
2027年問題とは何ですか?
SAP Business Suite 7(ECC 6.0 など)の通常保守が2027年末で終了し、以降は有償の延長保守が2030年末まで提供される予定であることから、期限までの移行判断を迫られる問題を指します。期限は2段階で捉えるのが実務的です。
S/4HANAへの移行はどの方式を選ぶべきですか?
アドオンが少なく現行業務を維持したい場合はシステムコンバージョン型、業務プロセスを見直したい場合やアドオンが多い場合は新規導入型が候補になります。判断軸はアドオン量・標準適合度・変革の許容度の3点です。
延長保守を使えば先延ばしにできますか?
延長保守は有償であり、単純な先延ばしはコスト増になります。移行期間を確保するための計画的利用や、段階移行の受け皿として設計する使い方が現実的です。
最初に着手すべきことは何ですか?
現行システムの棚卸し(アドオン・帳票・インターフェース・利用頻度)です。ここで「廃止できるもの」を確定できると、その後の移行範囲・工数・テスト計画が具体的になります。