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SAP S/4HANAの業務パートナー(BP)を徹底解説:顧客・仕入先を1本化する後台設定と前台操作(61ページ資料を凝縮)

S/4HANAでは顧客マスタと仕入先マスタが「業務パートナー(BP)」に1本化され、旧Tコード(XD01・XK01・FD01・FK01など10種類以上)は使えなくなります。本記事は2020年編著のBP設定・操作マニュアル(全61ページ)をベースに、IMGでの後台設定7ステップ、TコードBPでの前台操作、后台テーブル、BAPI連携までを実務順に整理しました。

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この記事のポイント

  • S/4HANAでは顧客・仕入先マスタが1つのBPに統合され、旧Tコード(XD01/XK01/FD01/FK01等)10種類以上が非対応になる
  • 標準BPロールは4つ——FLCU00(顧客・会社コード)・FLCU01(顧客・販売)・FLVN00(仕入先・会社コード)・FLVN01(仕入先・購買)
  • BP・顧客・仕入先の番号範囲は「外部番号・A〜ZZZZZZZZZ」で3者一致させるのが鉄則(ずれると毎回手入力になる)
  • 設定が済めば前台操作は「TコードBP → ロールを順に追加 → 保存」だけ。后台はBUT*・L*・KN*テーブル、自動化はBAPIで実現できる
ADTナビゲーター
「S/4HANAに移行したらXD01が使えなくなった」「BPって結局、顧客と仕入先をどうやって1つにまとめるの?」——移行プロジェクトでよく聞かれる質問です。今日は後台設定7ステップと前台操作を、61ページの資料から実務順にまとめます。

01WHAT 業務パートナーとは:なぜS/4HANAで1本化されたのか

SAP S/4HANAでは、従来ERP(ECC)で別々に管理していた顧客マスタと仕入先マスタが「業務パートナー(Business Partner、BP)」に統合されました。業務パートナーとは、購買・販売に関わる取引先(顧客・仕入先)の統称で、S/4HANAでは顧客や仕入先を作成する際、必ず先に業務パートナーを維持する必要があります。

旧Tコード10種類以上が非対応——すべてBPで行う

ECCで顧客マスタ・仕入先マスタを直接操作していた下記のTコードは、S/4HANAではサポートされません。すべてトランザクションコード「BP」での操作に置き換わります。

  • 顧客系——XD01/XD02/XD03/XD06(顧客マスタ)、FD01/FD02/FD03/FD06(FI顧客)、VD01/VD02/VD03/VD06(販売顧客)、V-03〜V-09、VAP1/2/3
  • 仕入先系——XK01/XK02/XK03/XK06/XK07(仕入先マスタ)、FK01/FK02/FK03/FK06(FI仕入先)、MK01/MK02/MK03/MK06/MK12/MK18/MK19(購買仕入先)、MAP1/2/3

これらのTコードを使い慣れている現場ほど「どこで操作するの?」と戸惑うのがS/4HANA移行の最初の関門です。統一されたBP画面の操作はシンプルで、ロールを追加していくだけで顧客にも仕入先にも拡張できるというのが最大の特徴です。

BPロールの仕組み——4つの標準ロールと自社ロール

業務パートナーは「ロール(役割)」を持たせることで、顧客・仕入先のどのビューを管理するかを切り替えます。SAPが標準で用意しているロールカテゴリとロールは次の4つです。

  • FLCU00(FI顧客)——顧客の会社コード(FI)ビューを管理(后台テーブルはKNB1)
  • FLCU01(顧客)——顧客の販売・配送(SD)ビューを管理(后台テーブルはKNVV)
  • FLVN00(FI仕入先)——仕入先の会社コード(FI)ビューを管理(后台テーブルはLFB1)
  • FLVN01(仕入先)——仕入先の購買(MM)ビューを管理(后台テーブルはLFM1)

通常はシステム標準のロールで足りますが、自社の運用に合わせてカスタムロールも作成できます。作成順は「ロールカテゴリ」を先に作り、次に「ロール」を作って関連付けます。カスタムロールの名前は「Z」始まりが慣例です。

ECCでは顧客マスタ(XD01系)と仕入先マスタ(XK01系)が別機能として独立していたが、S/4HANAでは業務パートナー(BP)に統合され、FLCU00(会社コード)・FLCU01(販売)・FLVN00(会社コード)・FLVN01(購買)の4ロールで拡張して1つのBPで両方のマスタを管理する概念図
図1:ECCの分離マスタがS/4HANAで1つのBPに統合され、ロールで拡張される仕組み
💡

BP番号=顧客番号=仕入先番号

業務パートナーのIDと顧客ID・仕入先IDは、システム上は「同じにすることが推奨(必須ではない)」とされています。実際のプロジェクトでは3つの番号を一致させて運用するのが標準です。番号の一致は後述の③・⑦の設定で実現します。

02後台(IMG)設定 BPを動かす7つのカスタマイズステップ

BPはカスタマイズ(IMG)で「どのロールを使うか」「番号をどう採番するか」「画面で何を必須にするか」を定義してから前台で運用します。資料では次の7ステップで設定を進めます。

① ロールカテゴリ/ロールの定義 → ② アプリケーションTコード

IMG[クロスアプリケーション → SAP業務パートナー → 業務パートナー → 基本設定 → ビジネスパートナーロール]で、ロールカテゴリ(FLCU00/FLCU01/FLVN00/FLVN01)とロールを確認・新規作成します。「定義アプリケーションTコード」では、顧客・仕入先ごとに個別操作できるTコード(例:FLCU1)を定義でき、権限の細分化と運用分離に使えます。

③ 番号範囲の定義——BP・顧客・仕入先で「3者一致」が鉄則

ここがBP設定の最重要ポイントです。業務パートナーの番号範囲(IMG[クロスアプリケーション → 基本設定 → 番号範囲とグループ])と、FI側の顧客・仕入先の番号範囲(IMG[財務会計 → 売掛/買掛管理 → マスタデータ → 番号範囲])は別々に定義しますが、運用上は3者を同じ番号範囲にしなければなりません。

  • 番号範囲は「A〜ZZZZZZZZZ」の文字列で定義し、外部採番にチェックを入れる(外部採番=BP作成時に番号を手入力。これによりBP番号と顧客/仕入先番号を同番号にできる)
  • 既に番号が発番済みの範囲は削除できないため、番号範囲の設計は移行前に慎重に行う
  • 番号範囲がずれていると、BP作成時に顧客/仕入先の番号を毎回手入力する運用になってしまう

④ フィールド属性 → ⑤ 仕入先・⑥ 顧客のアカウントグループ(画面フォーマット付き)

ロールごとに画面項目の属性(表示・非表示・必須入力・任意)を制御できます。IMG[基本設定 → フィールドグループ → 各ビジネスパートナーロールのフィールド属性を設定]がそれで、入力ミス防止と画面の簡素化に効きます。仕入先アカウントグループは「基本情報・会社コードデータ・購買データ」の3グループ、顧客は「基本情報・会社コードデータ・販売データ」などの5グループ構成で、グループごとに必須項目を定義します。

⑦ BP⇔顧客/仕入先アカウントグループの関連付け——「同番号」にチェック

最後に、BPのアカウントグループと顧客・仕入先のアカウントグループを関連付けます。IMG[顧客/仕入先統合の設定 → フィールド割当 → キー値の割当 → BPから顧客/仕入先への番号割当を定義]で、「同番号」にチェックを入れます。これにより、BPから顧客・仕入先マスタを作成するときに同じ番号が自動で引き継がれます。未チェックだと毎回手入力が必要になるため、移行作業では漏れの多発ポイントです。

BPの後台設定7ステップのフロー図。①ロールカテゴリ/ロール定義②アプリケーションTコード③番号範囲定義(BP・顧客・仕入先で3者一致・外部番号A〜ZZZZZZZZZ)④フィールド属性⑤仕入先アカウントグループ⑥顧客アカウントグループ⑦BP⇔顧客/仕入先の関連付け(同番号チェック)で、最終的にBP番号=顧客番号=仕入先番号になる
図2:後台(IMG)設定7ステップ——③と⑦で番号を揃えるのが成功のカギ
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番号のずれが起きる典型パターン

「BPの番号範囲だけ作って、FI側の顧客/仕入先番号範囲を作り忘れた」「外部採番のチェックを入れ忘れた」——この2つが最も多い設定漏れです。テスト環境でBPを1件作成し、BP番号・顧客番号・仕入先番号が一致することを必ず確認してから本番移行してください。

03POINTS TコードBPで仕入先・顧客マスタを作成する6ステップ

設定が済んだら前台(トランザクションコードBP)でのマスタ作成です。資料の例では仕入先「USSU-VSF08」、顧客「USCU_L11」を作成しています。基本の流れは「一般データ → ロールを追加 → 保存」で、顧客・仕入先とも同じ操作体系です。

  1. TコードBPを起動し、番号とグループを指定——「新規作成」で業務パートナー番号を入力します。外部採番の場合は番号を手入力し、グループは外部番号分配(例:0002)を選択します
  2. 一般データ(ロール000000)を入力——名称・検索語・住所(通り・郵便番号・都市・国)・言語・電話/E-mailなど、どの取引先にも共通の基本情報を登録します。保存すると后台テーブルBUT000・BUT020に格納されます
  3. 仕入先を拡張(FLVN01→FLVN00)——仕入先を作る場合はロールFLVN01(購買)を追加し、購買組織・注文通貨・支払条件・国際貿易条件(インコタームズ)などを入力します。続けてFLVN00(会社コード)で会社コード・買掛金統制勘定・支払条件を登録します
  4. 顧客を拡張(FLCU00→FLCU01)——顧客を作る場合はロールFLCU00(会社コード)で会社コード・売掛金統制勘定・税カテゴリ(中国ならCN・MWST)を、FLCU01(販売)で販売組織・流通チャネル・部門、注文・出荷・請求の各タブの項目(顧客価格手続・出荷条件・国際貿易条件・支払条件・税分類など)を登録します
  5. 保存して后台テーブルへ登録を確認——保存するとBP一般データ(BUT000)に加え、仕入先ならLFB1(会社コード)・LFM1(購買組織)、顧客ならKNB1(会社コード)・KNVV(販売・配送)・KNVI(売上税)にビューが展開されます。BPロールはBUT100に記録されます
  6. 外部連携・大量登録はBAPIで自動化——バッチや他システム連携ではBAPI(後述)を使います。ECCからの移行時はFLBPC1/FLBPD1で顧客・仕入先からBPを生成し、大量件数はMDS_LOAD_COCKPITで一括変換します
前台操作フローと后台テーブルの対応図。TコードBPから①一般データ(000000)→仕入先はFLVN01(購買)・FLVN00(会社コード)/顧客はFLCU00(会社コード)・FLCU01(販売)の順にロールを追加して保存。データはBUT000・BUT020・BUT100・BUT0BK(BP共通)、LFB1・LFM1(仕入先)、KNB1・KNVV・KNVI(顧客)に格納され、自動化はBAPI_BUPA_CREATE_FROM_DATAなど23グループで実現
図3:前台操作(TコードBP)の流れと后台テーブルの対応——ロールの追加順を覚えれば操作は迷わない

変更・表示も同じBP画面で

BPの「変更」は、番号を入力して表示し、フィールドが編集不可になっていたら「変更モードへ切替」をクリックします。「表示」は読み取り専用、変更は編集可能、というGUIの基本操作だけで全ビューを操作できます。アドレス変更はBUT020を、ロール追加はBUT100を意識するとABAP開発時も迷いません。

04INSIGHT ECC移行・BP化プロジェクトへの応用

S/4HANA移行では、既存の顧客・仕入先マスタをすべてBP化する「マスタ移行」が避けて通れません。資料のFAQにもある通り、ECCの顧客をBPに変換するにはFLBPC1/FLBPD1を使い、大量件数の一括変換はMDS_LOAD_COCKPIT(Master Data Synchronization Load Cockpit)で行います。変換前に番号範囲の3者一致を設計し、外部採番の設定を済ませておかないと、移行後の番号体系が崩れます。

また、CRMや外部システムとの連携ではBP用BAPIが活躍します。資料ではBAPI_BUPA_CREATE_FROM_DATA(BP作成)をはじめ、住所(BAPI_BUPA_ADDRESS_ADD/CHANGE)、ロール(BAPI_BUPA_ROLE_ADD)、銀行(BAPI_BUPA_BANKDETAIL_ADD)、税(BAPI_BUPA_TAX_ADD)、販売ビュー(BAPI_BUPA_FRG0010_ADD)など23グループ・数十個のBAPIが紹介されており、SD開発やマスタ整備の自動化(RPA・LLMによるマスタ入力支援)に応用できます。

S/4HANA移行全体の進め方・注意点はSAP S/4HANA移行とは?プロジェクトの流れと注意点を解説で、購買プロセス全体における仕入先マスタの位置づけはSAP MMとは?購買から入庫・支払までのProcure-to-Payプロセスを解説で、販売側の顧客マスタの使われ方はSAP SDとは?受注から出荷・請求までの販売プロセスを解説で解説しています。あわせてご覧ください。

🔎

豆知識:BAPIはCRM由来・S/4HANAでも現役

資料によると、BP作成・拡張のBAPIはもともとCRMシステムで使われていたものが多く、S/4HANAでもそのまま有効です。特に顧客の販売ビュー(FRG0010)・出荷ビュー(FRG0020)・請求ビュー(FRG0030)の変更は、中間基盤(qRFC)を経由してERP側の顧客グループ1〜5などを更新します。このため「BPはマスタだけでなくCRM系連携の要」と言えます。

まとめ

  • S/4HANAでは顧客・仕入先マスタが業務パートナー(BP)に統合され、旧Tコード(XD01/XK01/FD01/FK01等10種類以上)は非対応。操作はすべてTコードBPで行う
  • 標準BPロールはFLCU00(顧客・会社コード)・FLCU01(顧客・販売)・FLVN00(仕入先・会社コード)・FLVN01(仕入先・購買)の4つ。自社ロールはZ始まりで作成
  • 後台設定は①ロール定義→②アプリケーションTコード→③番号範囲→④フィールド属性→⑤仕入先・⑥顧客アカウントグループ→⑦BP⇔顧客/仕入先の関連付けの7ステップ
  • ③番号範囲はBP・顧客・仕入先で「A〜ZZZZZZZZZ・外部採番」の3者一致、⑦は「同番号」チェックが必須。ここがずれると毎回手入力になる
  • 前台操作は「BP起動 → 一般データ(000000)→ ロール追加(仕入先:FLVN01→FLVN00/顧客:FLCU00→FLCU01)→ 保存」の流れ
  • 后台はBUT000/BUT020/BUT100/BUT0BK(BP共通)・LFB1/LFM1(仕入先)・KNB1/KNVV/KNVI(顧客)。自動化・連携はBAPI_BUPA_CREATE_FROM_DATAなど23グループを活用

出典・参考

※本記事は上記の公開情報・社内資料をもとに、アラディンテクノロジー株式会社編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-08-30)の情報です。Tコード・IMGパス・テーブル名はリリースにより変わることがあります。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。

05FAQ よくある質問

ADTナビゲーター
移行プロジェクトで実際によく聞かれる質問を、資料のFAQをもとにまとめました。まず番号設計から見直したい方は④もチェックしてみてください。
ECCからS/4HANAに移行するとき、既存の顧客番号範囲・アカウントグループはどうすればいい?

顧客・仕入先の番号範囲設定はそのまま引き継げますが、BP関連の設定(BUC2・BUCFでのBP番号範囲、ロール、フィールド属性、アカウントグループ関連付け)はすべて実行し直す必要があります。BPを顧客と同じ番号で作成したい場合は、「BPから顧客/仕入先への番号割当」で同番号を設定します(資料のFAQ・設定パス参照)。

ECC 6で運用していた既存顧客・仕入先をBPに変換するには?

トランザクションFLBPC1/FLBPD1で顧客・仕入先からBPを作成できます。大量件数はMDS_LOAD_COCKPIT(マスタデータ同期ロードコックピット)で一括変換するのが効率的です。変換前に番号範囲の3者一致・外部採番を済ませておくことが成功の前提です。

旧Tコード(XD01・XK01・FD01・FK01など)はS/4HANAでも使える?

使えません。S/4HANAでは顧客・仕入先マスタの作成・変更・表示はすべてトランザクションコードBPで行います(資料では非対応Tコードとして10種類以上のグループが列挙されています)。運用マニュアルと教育をBP操作に切り替えましょう。

BP番号と顧客・仕入先番号は必ず同じにする必要がある?

システム上は「同じにするのが推奨・強制ではない」とされています。ただし実務では3者を一致させて運用するのが標準で、一致させるには番号範囲の3者一致+外部採番+「同番号」設定が必要です。一致していないとBPからマスタを作成するたびに番号を手入力する運用になり、ミスの温床になります。

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この記事について

執筆

アラディンテクノロジー編集部

SAP・AI・DX領域の技術情報を、実務に使える形で整理・発信するADTの編集チーム。一次情報を重視し、図解と実践手順をセットで解説します。

監修

劉 瑞

アラディンテクノロジー株式会社 代表取締役社長。SAPコンサルティング歴20年以上。S/4HANA移行・マスタ統合・AI活用の現場支援を多数手がける。

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